大将はいずこ・・・
山口市道場門前のアーケード街には老舗の天ぷら屋【さわらぎ】があります。
お店は階段を上がった二階に。
随分前、初めてこの店に入った頃、ご高齢の夫婦で営んでおられる上品な店、という印象で、薄めの衣の後味の良い天ぷらを出す店でしたが、いつしか大将がおられなくなり、代わりに奥様が天ぷらを揚げるようになりました。
10年以上前、私の父が元気なころに『ここの天ぷらが美味しい』と言っていたのですが、父が癌を患って病床に臥せっているときにふとこの話をしたところ『そんなこと言ったかのー…覚えてないのー』との返事でした。
私はここ数年、年に一回行くか行かないかのペースでした。
昨日18時過ぎに久しぶりに店を覗いてみると、まだ客は誰もおらず、奥様が椅子に座って新聞を読み、ホール係の高齢の女性はのんびりテレビを見ておりました。
私が天丼を頼んだところで衣の粉を溶き始め、丁寧に天ぷらを揚げ始めましたが、奥様も随分と年を召された印象でもありました。
ご主人がご健在なのかどうかも分かりませんが、今時よくあるチェーン店ではなく、こういった田舎の名店が末永く続いてくれるとイイなと思っております。
私はいつか父と一緒にこの店に来ることができればと思っていたのですが、その思いは叶わず、少しだけ後悔の念があります。この日、結局最後まで客は私一人。お代を現金でお支払いし、一礼して店を後にしたのでした。