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児童虐待対策法改正では子ども達は救えない

 6月19日、改正児童虐待対策関連法が参議院本会議で可決成立し、翌4月1日から施行されることになりました。

 昨年3月に東京都目黒区で当時5歳の女児が死亡するなど各地で悲惨な事件が続いたことを受けた法改正ですが、結局は虐待者への罰則は見送られました。

 マスコミでは今回の法改正について、“しつけのあり方を見直すきっかけになりそう”と概ね前向きな評価ですが、この法律はあくまでも起こってしまった虐待事案への“対策法”であり“予防”の効果はほぼありません。つまり新たな被害を防ぐ効果はないのです。

 また改正法は児童相談所に医師や保健師の配置をようやく義務づけることになり、確かに一定の前進ではありますが、そのどちらもが、既に起こってしまった虐待への対応に追われることになり、“予防”に寄与するものではありません。そもそも児童福祉司や児童心理司の増員は思うように進んでいません。

(この20年間で虐待件数は20倍になっていますが、職員数が20倍になるわけもありません) 

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  児童相談所は東京都や政令指定都市などの大都市を除けば、基本的には道府県の管轄であり、市町村役場のように地域に細かく根ざした配置にはなりえません。

 ひとりの児童福祉司が数万人の人口をカバーするわけです。

 特に乳幼児(※死亡事例の多くは乳幼児)の虐待死を防ぐためには都道府県ではなく身近な市町村配置の保健師がもっと活躍できるような工夫が必要になります。日本の保健師は世界一優秀とも言われます。妊産婦期から3歳児検診頃までの育児支援が予防の鍵を握ります。(特に0歳児の死亡率が高い)

 また、日本はもっと保育士を大切にするべきです。孤立した育児が増えている昨今、育児支援の役割は、身近なところからすべきなのです。この国の児童福祉の根幹は保育士が支え、医療の根幹は看護師がささえています。

 実は既に大都市圏での児童相談所には医師(精神科医)が常勤配置されているところがあります。また、多くの自治体では既に保健師を配置しております。今回の法改正にはさほど新しさはないのですが、“医師配置の義務づけ”という点では一定の前進と言われています。とはいえ、児童虐待の機序を理解でき、親指導もできる医師はこの国にはほぼいません。仮に国が地方自治体に対し医師配置の予算措置を講じたとしても、実際に質の高い診察・支援ができるかと問われれば、これまでの“嘱託医”に依頼していた頃となにも変わらない結果になる可能性もあるわけです。(この国は、児童精神科医を育ててこなかった!)

 児童虐待にあたる専門職であるはずの“児童福祉司”は、多くの自治体では普通の行政職であり、つまり、県税事務所や土木事務所などに勤めていた人が異動(転勤)で数年間だけ児童福祉司として配属されているわけです。少人数のみ、行政職ではなく福祉専門職を配置している例があったとしても、結局は過重なストレスのかかる虐待対応業務が長年続けば途中で心や体を病んで辞めてしまい、その穴埋めの形で結局は行政職や保健師児童福祉司として配属されることになります。

 児童福祉司の人数と質の確保は喫緊の課題なのですが、ここが一番難しいところだと思われます。(※個人的には不可能だと思っています)

 国家資格として“社会福祉士”というものがありますが、この集団は外部から児童相談所の不備を責めることはしても、自ら児童福祉司の任を担おうと意思表示(※仮に募集したとしても)する人は少ないと思われます。個人情報保護の問題が指摘される(※公務員でなければならないという論調)こともありますが、社会福祉士守秘義務を理解している集団のはずです。数は少なくても、志を持った希望者は児童福祉司になれるようにしても良いのではないでしょうか?

mainichi.jp

 児童虐待からの保護のイラスト

構造的に無理がある

 さて、日本の児童福祉にかけられる予算は、人口規模に換算しても、欧米諸国より一桁は少ないと言われています。これからも、児童福祉よりも高齢者福祉がこの国の優先事項になるかもしれませんが、ひとたび虐待死事件がおこればマスコミは児童相談所の対応を攻撃し、国民も虐待事件が繰り返されることの腹立ちをぶつける先としては児童相談所以外に考えられないということにもなります。

 しかしそもそも構造的にも無理があるのではないでしょうか。

 そろそろ、ひどい虐待事案に関しては“家庭内の問題”としてではなく、諸外国と同様に“犯罪”として扱う方向へ、この国も方向転換する時期ではないでしょうか。(もちろん軽微な虐待は福祉の範疇です)

 仮に私が近所で出会った警察官を殴り痣ができるような事態になれば私は逮捕されるのでしょう。ところが親が子を殴ってたくさんの痣ができても、ほとんどのケースではお咎め無し。今回も罰則が見送られました。普段、虐待死の事件が報道されると世間では怒りの声が上がりますが、一方でその世論は、親の体罰を容認する声が大勢です。もちろん、少し頭を小突いたくらいでいちいち逮捕しろ、と言っているのではありません。しかし、今の日本では子どもが死ぬほどの事態でなければ虐待者はお咎め無しなのが現実です。

 そういう意味では、親権のひとつである“懲戒権”についてそれを制限するような議論が起こっていること自体は前進かもしれません。

 

 ここで少し矛盾するような私見を述べるのですが、私は児童相談所にとって親権の壁は、“懲戒権”云々よりもむしろ“居所指定権(民法第821)条)”の方だと思っています。懲戒権のあり方について議論を戦わせるのはあまり意味が無いようにも思っています。

親権という概念を採用している国は少ない

 そもそも“親権”という考え方そのものが明治にできた民法の古い考え方を今だに引きずっているものであり、諸外国ではむしろ法的な記述において“親権”よりも、“親の義務”や“子どもの権利”を規定する流れなのですが・・・  

ja.wikibooks.org

なぜ虐待死事件は繰り返される?

  なぜ児童相談所は虐待する親から子を引き離せないのか?

 必ずしも多くの児童相談所職員に専門性が乏しいからという理由では無く、その判断には困難が伴うのです。

 確かに“一時保護”については児童相談所には強い権限が与えられています。

 ところが、一時保護の後に正式に施設や里親に委託措置しようという段になると、原則としては“親権者の同意”が必要となるわけで、この根拠が、上記の居所指定権(民法821条)なわけです。(※一時保護権限はあくまでも“一時的”なもの)

 児童福祉法第27条に措置に関する記載があるのですが、ここには『その親権を行う者又は後見人の意に反して、これをとることができない』とも書かれており、虐待の親子を分離するには親の同意が必要になるわけで、これに多くの児童福祉司は苦しむわけです。(同意などしない親がほとんど)

 

 想像してみてください。痣のある子を発見し児童相談所がとりあえず職権で一時保護をし、親が怒り狂ったものの、その後の措置(親子分離)については親の同意が得られず、痣のある子を虐待者(親)に返さねばならないことの危険性を。しかし日本の法律は構造的にここを根本的には解決しておりません。また、初回の保護で子どもの体にいくつかの痣があってもほとんどの場合、警察は親を罰することはありません。

 これが、たとえば極端にひどいケース…全身に命の危険が感じられるほどの痣や傷があることが判明し、医師の診断書も取り、子どもの証言にも矛盾が無ければ、親の同意が無くても、児童福祉法第28条により家庭裁判所の承認を得て親子を引き離すこともできるのですが、つまりこれは児童相談所に決定権は無く、家庭裁判所に決定権があるわけですし、手続き的にも時間のかかるものです。

 

 実は、日本の法制度については“子どもの権利条約児童の権利に関する条約)”との矛盾を指摘する声もあります。

 本来、親子を引き離すには司法の意見を求める必要があるはずで、子どもを施設に入所させるための決定権が、“居所指定権”という名の“親の権利”であることに疑義を唱える人もいるわけです。(日本は変わった国?) 

www.mofa.go.jp

深刻な虐待事例については家庭裁判所が措置権を

 話がややこしくなりますが、大まかに結論を求めると、『親子を引き離す必要があるほどのひどいケースの虐待対応ははじめから福祉ではなく司法機関(家庭裁判所など)が担うべき』ということになります。諸外国は既にその方向です。

 今後も“児童相談所の機能強化”という方向性だけで、虐待死が減らせると考えるべきではないのだろうと思うわけです。

 いずれにせよ、福祉を担う地方自治体に予算という体力が乏しいのが現実です。 

新たな役割分担を

 強制的な親子分離については通告の段から司法が担い、その後の心理的ケアを児童相談所などの福祉機関が医療とも連携して担う。現状は心のケアを受けないままの子どもたちがそのまま施設や里親へ預けっぱなしにされ、施設職員や里親がトラウマを抱えた子どもたちの養育に戸惑い苦しんでいる状況も生じています。

 小手先の法改正ではなく、根本的な発想の転換が必要な時期ではないでしょうか。

 現在、日本の児童相談所は『児童に関するあらゆる相談に応じる』機関であり、虐待に限らず何もかも(※療育手帳の判定まで)を児童相談所が行うことになっており、そもそも無理があるのだろうと思われます。

 

※以上、独り言でした・・・

 

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