錆との戦いは今日も続く

日産パオの走行距離、50万㎞を超えました・・・

日産シャポー(CHAPEAU)とシャッポ(Chappo)とキューブとパイクカーの系譜の終焉について

日産キューブ生産終了のお知らせ

 似たような見た目の車ばかりが目立つ昨今にあって、個性的なフェイスの日産キューブが今年いっぱいで生産を終了するそうです。

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上の絵は三代目キューブですが、初代と三代目は知人が乗っており、二代目は以前働いていた職場の車として常用しておりましたので、個人的にもキューブには馴染みがあるのです。デザインが楽しいだけでなく視座が高くて乗りやすい車でもあります。

さて、生産終了の理由ですが、日産広報からは『年明けから適用される内部突起の法規に対応できないため』との発言があるようです。これをオフィシャルなものと受け取って良いのかは不明ですが、『四代目キューブは今の法規に対応すれば良いだけなのではないか!?』との疑念は当然沸いてきます。 

いずれにせよ現行の三代目キューブ登場から既に10年を経過し、四代目を開発するか生産を終了するかの判断を迫られる時期だったことは確か。きっと商業的な判断もあったのでしょう。

初代日産キューブの系譜

初代日産キューブ(Z10型)は1997年の東京モーターショーに参考出品車としてマーチをベースにしたハイトワゴンとして登場し、1998年2月に発売開始となりました。

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初代キューブ

その名のとおり、立方体の居住空間が特徴(※以前、ルービックキューブという立方体パズルがありましたね…)であり、バックドアにはガラスハッチを採用。発売から10ヶ月後には累計生産台数10万台を突破する人気車種となりました。

ルービックキューブをしている人のイラスト(男性)

実はここから遡ること9年前の第28回(1989年:平成元年)東京モーターショー(※バブル期の伝説のモーターショーとも言われています)にて、日産はキューブの元になるコンセプトカー、シャポー(CHAPEAU)を発表しているのですが、これぞまさに立方体の居住空間。空力的には問題ありですが、デザイン的には“あり”でした。

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CHAPEAU

1980年代後半からバブル期末期にかけて、日産はパイクカー(とんがった車)”と呼ばれる個性的なシリーズを販売しており、初代パイクカーはBe-1(1987年)、二台目が私の愛車パオ(1989年)、三台目はその後なぜかイギリスでブームを生んだフィガロ(1991年)です。これに商用車のエスカルゴ(1989年)やラシーン(1994年)を加えることもあります。

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ja.wikipedia.org

 当時の日産には『新しいもの、面白いものを産み出してやろう』という気概があったように思うのですが、バブルが弾け、自動車業界も不況の波に襲われ、特に日産はそのお家事情も重なり、“無難に売れる車”が優先されるようになりました。

そんな中にあって、キューブのデザインは“頑張った”ものだったように思うのです。

 二台目キューブの冒険

初代キューブの成功を受け、日産は2002年から二代目キューブ(Z11型)の販売を開始します。

テールランプは従来の縦型からリアバンパー内蔵の横型となり、左右非対称ボディと角をイメージした個性的なデザイン、後付けではない一体感のあるワイドフェンダーなどが話題を呼び、大ヒット車になりました。トランスミッションは6速マニュアルモード付きCVT「エクストロニックCVT-M6」または電子制御4速オートマチック「E-ATx」。CVT車で、マニュアルモードにした場合は先代と同じくステアリングのスイッチで変速。パーキングブレーキは、先代ではハンドレバー式であったものが、このモデルより足踏み式が採用されました。デザイン的にも機能的にも日産がまだ冒険心を持っていることの証とも言われ評価されました。

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二代目キューブ

二代目キューブの元となったものは、2001年のジュネーブ(スイス)モーターショーにて発表されたコンセプトカー、シャッポ(Chappo)だと言われています。

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シャッポ(Chappo)

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シャッポ(Chappo)

インテリアもエクステリアも左右非対称の挑戦的なデザイン。

モーターショーの個性的なデザインが実際に販売される車にどの程度反映されるのかは様々な困難があるのですが、二代目キューブは“左右対称であるべき”という不文律を打ち破ったという点で秀逸なものと評価されるべきでしょう。商業的にも成功しております。

三代目キューブ(Z12型)は最後のパイクカーか?

 先代までのコンセプトをキープしつつ、使い勝手と室内空間の向上、デザインのブラッシュアップなどを成し遂げ、2008年に登場したのが三代目キューブです。 

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三代目キューブ

 エクステリアは水平基調としながらも、直線を極力使わずに曲面を多用することで“豊かさ”を強調。デザインモチーフに「ブルドッグがサングラスをかけた姿」を挙げるなど愛嬌のあるキャラクターをも目指し、左右非対称デザインの横開き式バッグドアやリアコンビランプは継承され、一目でキューブとわかるデザインとされました。一方、インテリアに関してはジャグジーをモチーフにしつつも随所に波紋のアクセントが採り入れられ、波打つようにラウンドしたインパネ周りがバスタブのカーブのような開放感を演出。また、コンパクトクラスでは珍しい縫製シートも採用し、シートバックの高さやクッションの厚みと長さを拡大。従来型以上にリラックス出来る座り心地を追求しています。 

2009年からは北米など左ハンドル圏での販売を開始したのですが、思いのほか販売数が伸びず、さらに日産の長引く業績不振も重なり、日産内部に冒険心がなくなっていったのかもしれません。

ピーク時の2003年には年間生産台数14万台にも及んだものが、昨年2018年(※この年に【グッドデザイン・ロングライフデザイン賞】を受賞!)にはわずか7千台にまで落ちこんでしまいました。

 

『軽自動車の台頭に破れてしまった』との声もあります。たしかに今時の軽のほうが、安全性能が高くて車内空間の広さもさほど変わらない。そうなると、税金など維持費も安くて燃費も良い軽自動車が選ばれるのは仕方がないのですが、今の日本人は【デザイン】へのこだわりがどんどん薄くなってきているようで寂しいのです・・・ 

左右非対称のとんがったデザインだったキューブの終焉は、パイクカーの終焉だったのかもしれません。

 

 体育座りをする人の後ろ姿のイラスト(男性)

 日産のお家騒動は今も続いています。

安全性能向上は良いことですが、デザインを犠牲にするようなセンスのない法規の制定も続いています。

先行きは明るくない日本の自動車事情でした。 

 

 

『頑張ってパオに乗り続けよっと・・・』

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